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名義変更ラッシュ!不動産・預貯金・株式…相続財産の手続き完全ガイド

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皆さん、こんにちは!今日のテーマは相続財産の手続き完全ガイドでお送りします。

大切な方が亡くなられた後、悲しみの中で直面するのが、故人様が遺された財産(相続財産)の名義変更手続きです。

不動産、預貯金、株式…「何をどうすればいいの?」と途方に暮れてしまう方も少なくないでしょう。

「名義変更ラッシュ!」というタイトルにドキッとした方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも大丈夫です!今日は、そんな不安を少しでも和らげ、皆さんがスムーズに手続きを進められるよう、主要な相続財産の名義変更手続きについて、必要な書類から手順まで、まるごと徹底的に解説していきます。

私もこれまで、本当にたくさんのご相談を受けてきました。

その経験から、皆さんがつまずきやすい点や、見落としがちなポイントなども、分かりやすくお伝えできればと思っています。

どうぞ、肩の力を抜いて、ゆっくり読み進めてくださいね。




はじめに:相続財産の名義変更って、なぜ必要?

まず、なぜ相続財産の名義変更が必要なのか、簡単にご説明させてください。

故人様が亡くなると、その方の名義になっていた財産は、法律上、相続人全員の「共有」状態になります。

つまり、そのままだと、例えば「この家は私のもの!」と主張しても、他の相続人も「いや、私も権利がある」ということになるんです。

この共有状態のままだと、後々のトラブルの原因になったり、その財産を売却したり、担保に入れたりすることができません。

不動産であれば、自分の名義でないと売買できませんし、預貯金であれば、故人様の名義のままでは引き出すことができません。

だからこそ、相続人の中から、あるいは相続人全員で、誰がどの財産をどれだけ受け継ぐのかを決め、それをきちんと法的な手続きによって「名義」として反映させることが必要なんです。

これが「名義変更」と呼ばれる手続きの核心部分になります。

特に、2024年4月1日からは、相続登記が義務化されました。 

これまで任意だった相続登記が、期限までにやらなければ過料(罰金のようなもの)の対象になる可能性があるんです。この点については、不動産の章で詳しくお話ししますね。

さあ、それでは、具体的な手続きに入っていきましょう。


第1章:不動産(土地・建物)の名義変更「相続登記」


相続財産の中でも、特に金額が大きく、手続きも複雑に感じられがちなのが不動産です。土地や建物といった不動産の名義変更は、「相続登記」と呼ばれます。


1-1. 相続登記とは?なぜ義務化されたの?

相続登記とは、故人様名義の不動産を、相続した方の名義に変更する手続きのことです。法務局という国の機関で手続きを行います。

冒頭でも触れましたが、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。 これまでは「いつかやればいいか…」と放置されてしまうケースが多く、所有者不明の土地が増えて、公共事業や災害復旧の妨げになるなどの問題が起きていました。

そこで、これらの問題を解決するために、相続登記が義務化されたのです。

義務化のポイント:

  • 期限: 不動産の相続があったことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
  • 対象: 2024年4月1日より前に発生した相続でも、まだ相続登記をしていない不動産についても義務化の対象となります。この場合は、2027年3月31日までに登記をしなければなりません。
  • 罰則: 正当な理由なく期限内に申請しなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この義務化は、皆さんにとって「やらなきゃいけないこと」が増えた、と感じるかもしれません。しかし、見方を変えれば、これまで曖昧だった不動産の権利関係が明確になり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができる、というメリットもあります。


1-2. 相続登記に必要な書類

相続登記には、本当にたくさんの書類が必要になります。一つずつ丁寧に準備していきましょう。

共通して必要な書類:

  1. 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
    • これは、故人様のすべての相続人を確定するために必要です。本籍地の役所で取得します。転居が多い方や、本籍地を何度か移されている方は、複数の役所で取得する必要がある場合もあります。
  2. 被相続人の住民票の除票
    • 故人様の最後の住所が確認できる書類です。
  3. 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人全員が生存していること、そして被相続人との関係を確認するために必要です。
  4. 相続人全員の住民票
    • 新しく名義人となる方の住所を確認するために必要です。
  5. 不動産を相続する方の住民票
    • 上記と同じく、名義人となる方の住所を確認します。
  6. 固定資産評価証明書
    • 不動産の所在地を管轄する市町村役場で取得します。相続登記の際に納める登録免許税の計算に必要になります。
  7. 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
    • 相続人全員で「誰がどの不動産を相続するか」を話し合い、合意した内容を記載した書類です。相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
  8. 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合)
    • 遺産分割協議書に押された実印が、確かに本人のものであることを証明します。
  9. 遺言書(遺言書がある場合)
    • 故人様が遺言書を残されていた場合は、その内容に従って相続します。
    • 公正証書遺言の場合: そのまま使用できます。
    • 自筆証書遺言の場合: 家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。検認済みの遺言書でないと、相続登記には使えません。
  10. 登記申請書
    • 法務局のホームページから書式をダウンロードできます。自分で作成することもできますが、専門家(司法書士)に依頼する場合は、司法書士が作成します。

ケースによって必要な書類:

  • 代襲相続が発生している場合(相続人が既に亡くなっていて、その子供が代わりに相続する場合など): その代襲相続人の戸籍謄本など、関係を証明する書類。
  • 相続放棄をしている相続人がいる場合: 家庭裁判所の発行する「相続放棄申述受理証明書」。

ご覧の通り、かなりの量の書類が必要です。役所での取得には時間もかかりますので、早めに準備に取り掛かることをお勧めします。


1-3. 相続登記の手順

相続登記の手順は、大きく分けて以下のようになります。

  1. 必要書類の収集
    • 上記で説明した書類を、市町村役場や法務局などで集めます。
    • 特に戸籍謄本は、故人様の出生から死亡までのものを遡って取得する必要があるため、時間がかかる場合があります。
  2. 相続関係の確認と遺産分割協議(遺言書がない場合)
    • 戸籍謄本などを集めて、誰が相続人になるのかを正確に把握します。
    • 相続人全員で話し合い、どの不動産を誰が相続するのかを決めます。これを「遺産分割協議」といいます。
    • 話し合いがまとまったら、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名・実印を押します。
  3. 登記申請書の作成
    • 法務局のホームページから様式をダウンロードし、必要事項を記入します。
    • 記載例なども参考にしながら、間違いのないように慎重に作成しましょう。
  4. 登録免許税の計算と納付
    • 固定資産評価証明書に記載されている不動産の評価額を基に、登録免許税を計算します。税率は、原則として「固定資産評価額の0.4%」です。
    • 計算した登録免許税額分の収入印紙を、登記申請書に貼り付けます。収入印紙は、郵便局などで購入できます。
  5. 法務局への申請
    • 必要書類一式と登記申請書を、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出します。
    • 郵送でも申請できますが、不安な場合は窓口で直接提出し、不明な点を質問することもできます。
  6. 登記完了証の受領
    • 申請から数日~数週間で、登記が完了した旨の連絡が来ます。
    • 法務局から「登記識別情報通知」(昔でいう権利証のようなものです)と「登記完了証」を受け取ります。これで、名義変更の手続きは完了です。

相続登記は、ご自身で手続きすることも可能ですが、非常に専門的な知識と多くの時間が必要です。 書類に不備があったり、記載内容に誤りがあると、手続きがやり直しになってしまうこともあります。

「自分でやるのは大変そう…」と感じたら、司法書士という専門家に依頼することをおすすめします。司法書士は、相続登記のプロです。複雑な書類作成や法務局とのやり取りをすべて代行してくれるので、時間と労力を大幅に削減できます。費用はかかりますが、その分、安心して手続きを進めることができますよ。


第2章:預貯金(銀行口座)の名義変更・解約


次に、故人様の預貯金口座に関する手続きについてです。預貯金は、比較的手続きがしやすい財産と言えますが、それでも押さえておくべきポイントがいくつかあります。


2-1. 預貯金の名義変更・解約とは?

故人様名義の預貯金口座は、死亡が金融機関に伝わった時点で、原則として凍結されます。これは、相続人全員の同意なしに勝手に預金が引き出されてしまうことを防ぐためです。

口座が凍結されると、ATMでの引き出しはもちろん、公共料金などの自動引き落としもできなくなります。ですので、故人様名義の口座で公共料金などを引き落としている場合は、早めに引き落とし口座の変更手続きをしておく必要があります。

相続手続きとしては、凍結された口座を「相続人の中から特定の誰かの名義に変更する」か、あるいは「口座を解約して、預金を相続人へ払い戻す」ことになります。


2-2. 預貯金手続きに必要な書類

金融機関によって、また、遺言書の有無や遺産分割協議の状況によって、必要な書類は多少異なりますが、基本的なものは以下の通りです。

共通して必要な書類:

  1. 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
    • 不動産と同様に、相続人全員を確定するために必要です。
  2. 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人全員が生存していることを確認します。
  3. 相続人全員の印鑑証明書
    • 遺産分割協議書や、金融機関所定の書類に押す実印が本人のものであることを証明します。
  4. 故人様の通帳、キャッシュカード、届出印
    • これらが手元にあると、手続きがスムーズに進みます。紛失していても手続きは可能ですが、別途、紛失届などの提出が必要になる場合があります。
  5. 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
    • 誰が、どの金融機関の、いくらの預貯金を相続するかを明記します。
  6. 遺言書(遺言書がある場合)
    • 公正証書遺言か自筆証書遺言かによって、提出書類が変わります。
    • 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済証明書が必要です。
  7. 金融機関所定の相続届(または相続手続依頼書)
    • 各金融機関の窓口に置いてある、またはホームページからダウンロードできる書類です。必要事項を記入し、相続人全員が署名・実印を押します。
  8. 預貯金を払い戻す相続人の実印と本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)

注意点:

  • 金融機関への連絡: まずは、故人様が口座を持っていた金融機関(銀行、信用金庫、郵便局など)に連絡し、相続手続きに必要な書類や手順を確認することが重要です。窓口で直接相談するのが一番確実でしょう。
  • 名義変更と解約: 相続人が複数いる場合は、口座を解約して預金を相続人全員で分け合うケースが多いですが、特定の相続人の名義に変更することも可能です。この点は、遺産分割協議でしっかりと話し合っておく必要があります。

2-3. 預貯金手続きの手順

預貯金の手続きは、以下の流れで進めます。

  1. 取引金融機関への連絡と必要書類の確認
    • まずは、故人様の口座があった金融機関の窓口に電話するか、直接訪問して、相続が発生したことを伝えます。
    • この際、故人様の口座番号や名義などを伝えると、手続きがスムーズに進みます。
    • 金融機関から、相続手続きに必要な書類の一覧や、金融機関所定の書類の用紙を受け取ります。
  2. 必要書類の収集
    • 金融機関から指示された書類を、役所などで集めます。
    • 特に、故人様の出生から死亡までの戸籍謄本は、相続関係を証明する重要な書類なので、漏れなく集めましょう。
  3. 遺産分割協議(遺言書がない場合)
    • 相続人全員で、故人様の預貯金を誰がどれだけ相続するのかを話し合い、遺産分割協議書を作成します。
  4. 金融機関所定の書類の記入と捺印
    • 金融機関から受け取った「相続届」などの書類に、必要事項を記入し、相続人全員が署名・実印を押します。
  5. 金融機関への提出
    • 必要書類一式と金融機関所定の書類を、故人様の口座があった金融機関の窓口に提出します。
    • 郵送での提出を受け付けている金融機関もありますが、重要な書類なので、窓口で直接提出することをお勧めします。
  6. 払い戻しまたは名義変更の完了
    • 書類に不備がなければ、通常、数日~数週間で手続きが完了します。
    • 解約の場合は、指定した相続人の口座に預貯金が振り込まれます。名義変更の場合は、新しい名義人の通帳が発行されます。

注意点:

  • 複数の金融機関がある場合: 故人様が複数の金融機関に口座を持っていた場合は、それぞれの金融機関で個別に手続きが必要です。
  • 相続人の代表者が手続きする場合: 相続人が複数いても、代表者が他の相続人から委任を受けて手続きを進めることも可能です。その場合は、金融機関所定の委任状や、他の相続人の印鑑証明書などが必要になります。事前に金融機関に確認しましょう。

預貯金の手続きは、金融機関ごとに微妙にルールが異なることもありますので、まずは早めに金融機関に連絡を取ることが、スムーズな手続きの第一歩となります。


第3章:株式(証券会社での手続き)の名義変更


故人様が株式を保有していた場合も、名義変更の手続きが必要です。株式の手続きは、預貯金や不動産とは少し異なる部分があります。


3-1. 株式の名義変更とは?

故人様名義の株式は、亡くなられた時点で、証券会社に連絡することで取引が停止されます。これは、不正な取引を防ぐためです。その後、相続人が確定し、誰がどの株式を相続するかを決め、それを証券会社に届け出て、新しい名義に変更する手続きが必要になります。

株式の名義変更には、主に以下の3つのパターンがあります。

  1. そのまま同じ証券会社の口座に引き継ぐ(移管)
    • 故人様が持っていた証券口座を、相続人の誰かの口座に引き継ぐ場合。
  2. 別の証券会社の口座に移す(口座振替)
    • 相続人がすでに別の証券会社の口座を持っており、そこに故人様の株式を移したい場合。
  3. 株式を売却して現金で受け取る
    • 株式は不要で、現金として受け取りたい場合。この場合も、一度相続人の名義に移してから売却手続きを行います。

3-2. 株式手続きに必要な書類

株式の名義変更に必要な書類も、預貯金や不動産と共通する部分が多いですが、証券会社独自の書類も出てきます。

共通して必要な書類:

  1. 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
    • 相続人全員を確定するために必要です。
  2. 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人全員が生存していることを確認します。
  3. 相続人全員の印鑑証明書
    • 遺産分割協議書や、証券会社所定の書類に押す実印が本人のものであることを証明します。
  4. 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
    • 誰が、どの銘柄の株式をどれだけ相続するかを明記します。
  5. 遺言書(遺言書がある場合)
    • 公正証書遺言か自筆証書遺言かによって、提出書類が変わります。
    • 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済証明書が必要です。
  6. 証券会社所定の相続手続依頼書(または名義書換請求書)
    • 各証券会社の窓口に置いてある、またはホームページからダウンロードできる書類です。必要事項を記入し、相続人全員が署名・実印を押します。
  7. 株式を相続する方の証券口座情報
    • もし、相続人がまだ証券口座を持っていなければ、新たに口座開設をする必要があります。
  8. 株式を相続する方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)

注意点:

  • 故人様の口座の確認: まずは、故人様がどの証券会社に口座を持っていたかを確認します。故人様の自宅に残された郵便物や確定申告書などから手がかりを探しましょう。
  • 特定口座か一般口座か: 故人様が特定口座を利用していた場合は、原則として特定口座のまま相続人に引き継がれます。しかし、一般口座の場合は、相続人が別途手続きが必要な場合があります。

3-3. 株式手続きの手順

株式の名義変更は、以下の流れで進めます。

  1. 取引証券会社への連絡と必要書類の確認
    • 故人様が口座を持っていた証券会社に連絡し、相続が発生したことを伝えます。
    • 故人様の口座番号や名義などを伝えると、手続きがスムーズに進みます。
    • 証券会社から、相続手続きに必要な書類の一覧や、証券会社所定の書類の用紙を受け取ります。
  2. 必要書類の収集
    • 証券会社から指示された書類を、役所などで集めます。
    • 特に、故人様の出生から死亡までの戸籍謄本は、相続関係を証明する重要な書類です。
  3. 遺産分割協議(遺言書がない場合)
    • 相続人全員で、故人様の株式を誰がどれだけ相続するのかを話し合い、遺産分割協議書を作成します。
  4. 証券会社所定の書類の記入と捺印
    • 証券会社から受け取った「相続手続依頼書」などの書類に、必要事項を記入し、相続人全員が署名・実印を押します。
  5. 証券会社への提出
    • 必要書類一式と証券会社所定の書類を、故人様の口座があった証券会社に提出します。
    • 郵送での提出を受け付けている証券会社もありますが、重要な書類なので、窓口で直接提出することをお勧めします。
  6. 株式の名義変更・移管または売却
    • 書類に不備がなければ、通常、数日~数週間で手続きが完了します。
    • 相続人の証券口座に株式が移管されるか、売却代金が振り込まれます。

注意点:

  • 上場株式と非上場株式: 上場株式は証券会社で手続きを行いますが、非上場株式(会社の株式で、証券取引所に上場していないもの)の場合は、その会社の株主名簿管理人(信託銀行など)に連絡して手続きを行います。
  • 相続税の申告: 株式の相続は、評価額によっては相続税の対象となります。相続税の申告が必要な場合は、税理士に相談することをおすすめします。
  • 配当金: 株式を相続するまでに支払われる配当金は、原則として故人様の口座に入金されますが、相続手続き完了後に相続人に支払われることがあります。

株式は、価格が変動する資産ですので、手続きに時間がかかると、その間に価値が変わってしまう可能性もあります。できるだけ早く手続きを進めることが大切です。



第4章:その他の相続財産と名義変更のヒント


これまで、不動産、預貯金、株式という主要な相続財産について解説してきましたが、相続財産はそれだけではありません。生命保険金や自動車、骨董品など、さまざまなものがあります。


4-1. 生命保険金

生命保険金は、原則として受取人固有の財産とされ、相続財産には含まれません。そのため、遺産分割協議の対象にはなりません。しかし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として扱われることがあります。

手続きの流れ:

  1. 保険会社への連絡: まずは、故人様が加入していた保険会社に連絡し、死亡保険金請求の旨を伝えます。
  2. 必要書類の提出: 保険会社から指示された書類(死亡診断書、戸籍謄本、受取人の本人確認書類など)を提出します。
  3. 保険金の受領: 手続きが完了すれば、指定された受取人の口座に保険金が振り込まれます。

注意点:

  • 受取人: 誰が受取人になっているかによって、手続きが異なります。
  • 契約者貸付金: もし故人様が保険会社から貸付を受けていた場合、保険金から相殺されることがあります。

4-2. 自動車

故人様名義の自動車も、名義変更が必要です。

手続きの流れ:

  1. 必要書類の準備:
    • 故人様の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
    • 相続人全員の印鑑証明書
    • 遺産分割協議書(自動車を誰が相続するか明記したもの)
    • 自動車を相続する方の住民票、印鑑証明書、車庫証明書
    • 故人様の車検証
    • 自動車税納税証明書など
  2. 運輸支局での手続き: 上記の書類を準備し、自動車を管轄する運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)で名義変更手続きを行います。
  3. 自動車税の変更: 名義変更が完了したら、管轄の都道府県税事務所に自動車税の納税義務者変更の連絡をします。

注意点:

  • ローンが残っている場合: ローン会社と相談し、残債の処理方法を確認する必要があります。
  • 売却する場合: 一度相続人の名義に変更してから売却するか、買主との間で売却に関する合意書を作成するなど、別途手続きが必要になります。

4-3. その他の財産(ゴルフ会員権、骨董品、絵画など)

  • ゴルフ会員権: ゴルフ場の運営会社に連絡し、名義変更の手続きを確認します。
  • 骨董品、絵画、貴金属など: 価値のある動産は、遺産分割協議の対象となります。評価が難しい場合は、専門家に鑑定を依頼することも検討しましょう。
  • デジタル遺産(SNSアカウント、ネット銀行など): 故人様が利用していたデジタルサービスについても、それぞれのサービス提供元に連絡して、アカウントの閉鎖やデータの削除、あるいは引き継ぎについて相談する必要があります。パスワード管理が重要になりますが、故人様がパスワードリストなどを残していることは稀なので、対応が難しい場合もあります。

4-4. 名義変更手続きのヒント

ここまで、様々な財産の名義変更について見てきました。改めて、手続きを進める上での共通のヒントをいくつかお伝えします。

  • 戸籍謄本は多めに取得しておく: 故人様の出生から死亡までの戸籍謄本は、どの手続きでも必ず必要になります。役所に行く手間を省くためにも、初めに必要となるであろう枚数より数枚多めに取得しておくと良いでしょう。金融機関や証券会社によっては、原本の提出を求められ、手続きが完了するまで返却されない場合もあるからです。
  • 書類はコピーを取っておく: 提出する書類は、必ずコピーを取っておきましょう。控えとして保管しておくことで、後から内容を確認したり、他の手続きで参考にしたりすることができます。
  • 各機関に事前に確認する: 手続きをする前に、金融機関、証券会社、法務局、運輸支局など、関係する各機関に必ず事前に連絡し、必要な書類や手続きの流れを確認しましょう。ホームページで最新の情報を確認するのも有効です。
  • 相続人同士の協力が不可欠: 相続手続きは、相続人全員の協力が不可欠です。特に遺産分割協議は、感情的になりやすい部分もありますが、冷静に話し合い、円満な解決を目指しましょう。
  • 専門家を上手に活用する:
    • 司法書士: 不動産の相続登記の専門家です。
    • 行政書士: 遺産分割協議書の作成や、自動車の名義変更など、様々な行政手続きをサポートしてくれます。
    • 税理士: 相続税の申告や、相続財産の評価など、税金に関する専門家です。
    • 弁護士: 相続人同士の話し合いがまとまらない場合や、紛争解決の専門家です。 「自分でやるのは大変」「もっと早く手続きを終わらせたい」と感じたら、これらの専門家を上手に活用することを検討してください。費用はかかりますが、時間と労力を節約し、安心して手続きを進めることができます。
  • 期限がある手続きに注意: 相続登記の3年以内、相続税の申告の10ヶ月以内など、相続手続きには期限が設けられているものがあります。期限を過ぎると過料が科されたり、税金の優遇措置が受けられなくなったりすることもあるので、注意が必要です。

第5章:相続の基本と名義変更の落とし穴


ここまで具体的な手続きについて解説してきましたが、最後に、相続全体の基本と、名義変更手続きで陥りやすい「落とし穴」についてもお話しておきたいと思います。


5-1. 相続の基本をおさらい

相続の開始: 人が亡くなった時に相続は開始します。

相続人: 民法で定められた順位で相続人が決まります。

  1. 常に相続人となる配偶者
  2. 第一順位:子(子が既に亡くなっている場合は孫などの直系卑属)
  3. 第二順位:直系尊属(父母、祖父母など。子がいない場合のみ)
  4. 第三順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合はその子である甥・姪。直系尊属も子がいない場合のみ)

遺言書の有無:

  • 遺言書がある場合: 原則として、遺言書の内容が優先されます。ただし、遺留分(法定相続人が最低限受け取れる相続分)には注意が必要です。
  • 遺言書がない場合: 法定相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産をどのように分けるかを決定します。

相続放棄: もし、故人様に多額の借金があった場合など、相続したくない財産がある場合は、「相続放棄」という手続きを家庭裁判所で行うことができます。これは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要がありますので、注意が必要です。


5-2. 名義変更の落とし穴!こんな時どうする?

私がご相談を受ける中で、皆さんがつまずきやすい「落とし穴」がいくつかあります。

落とし穴1:相続人の特定が難しい!

  • 「故人様が再婚していて、前妻との間に子どもがいたことを知らなかった…」
  • 「養子縁組をしていたけど、その事実を誰も知らなかった…」

このようなケースでは、戸籍謄本を遡って取得していくうちに、今まで知らなかった相続人が判明することがあります。相続人全員が揃わないと、遺産分割協議はできませんし、手続きも進められません。戸籍謄本の収集は、根気強く丁寧に行うことが大切です。

落とし穴2:遺産分割協議で揉めてしまう!

  • 「実家を誰が相続するかで兄弟姉妹が意見が合わない…」
  • 「特定の財産だけを、特定の相続人が独占しようとしている…」

遺産分割協議は、感情的な問題が絡みやすく、話し合いがまとまらないケースも少なくありません。話し合いが難航しそうな場合は、弁護士に相談し、第三者に入ってもらうことも検討しましょう。家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用するという方法もあります。

落とし穴3:手続きの期限を過ぎてしまう!

  • 「相続登記の義務化を知らずに、期限を過ぎてしまった…」
  • 「相続放棄の期限を過ぎてしまい、借金も相続してしまった…」

それぞれの相続手続きには、それぞれ期限があります。特に、2024年4月1日から義務化された相続登記については、罰則規定もありますので、注意が必要です。分からないことがあれば、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談するようにしましょう。

落とし穴4:相続税の申告漏れ!

  • 「相続財産が少なくても、実は相続税がかかる場合があることを知らなかった…」
  • 「申告期限を過ぎてしまい、延滞税や加算税を払うことになった…」

相続税は、故人様の財産の合計額が「基礎控除額」を超える場合に課税されます。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。 例えば、法定相続人が1人であれば、3,600万円を超える財産がある場合に相続税がかかる可能性があります。

相続税の申告は、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。少しでも相続税がかかる可能性があると思ったら、税理士に相談することをお勧めします。

落とし穴5:名義変更しないリスク!

「まあ、急がなくてもいいだろう」と名義変更をせずに放置してしまうと、思わぬリスクが潜んでいます。

  • 不動産の場合: 次の相続が発生して、さらに相続人が増え、権利関係が複雑になってしまいます。そうなると、売却や担保設定が非常に困難になります。義務化により、過料の対象にもなります。
  • 預貯金の場合: 故人様の口座が凍結されたままだと、必要な時に預金を引き出せません。
  • 株式の場合: 配当金が受け取れなかったり、売却したい時に手続きができなかったりします。
  • 共通するリスク: 相続人が高齢化したり、認知症になったりして、意思表示ができなくなると、手続き自体が困難になる場合があります。また、相続人の誰かが亡くなってしまうと、その方の相続人を含めて手続きをする必要が生じ、さらに複雑化します。

これらの「落とし穴」に陥らないためにも、早めに、そして確実に手続きを進めることが何よりも大切です。


おわりに:一人で抱え込まず、頼れるプロの力を借りて

ここまで、主要な相続財産の名義変更手続きについて、網羅的に解説してきました。

「こんなにたくさんの手続きがあるの…?」 「私一人で全部できるかしら…?」

そう感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。正直なところ、相続手続きは、人生の中で何度も経験するものではありませんし、専門的な知識も必要になるため、戸惑うのは当然のことです。

私もこれまでの相談経験を通して、本当に多くのご家族の相続手続きに立ち会ってきました。皆さんが抱える不安や疑問は、ごく当たり前のことだと感じています。

一番大切なのは、一人で抱え込まないことです。

もし、この記事を読んで、「もっと詳しく聞きたい」「この場合はどうすればいいの?」といった疑問が湧いてきたら、遠慮なく専門家に相談してください。

司法書士、行政書士、税理士、弁護士など、相続の専門家は、皆さんの不安を解消し、スムーズな手続きをサポートするために存在しています。費用はかかりますが、それ以上の安心と、時間・労力の節約に繋がることがほとんどです。

不動産取引の現場で、相続登記が済んでいないために売却が難航するケースや、遺産分割で揉めてしまって何年も解決しないご家族をたくさん見てきました。そうならないためにも、早めの対応が何よりも重要だと心から感じています。

相続は、亡くなった故人様から、残された大切なご家族への最後のメッセージでもあります。故人様の想いをしっかりと受け止め、ご家族が安心して次のステップに進めるよう、名義変更という大切な手続きを、一歩ずつ着実に進めていきましょう。

このガイドが、皆さんの相続手続きの一助となれば幸いです。もし、何か困ったことがあれば、いつでもご相談くださいね。

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