突然届いた「空き家の相続人」という通知!あなたはどうする?
ある日突然、見覚えのない住所の「空き家」の相続人になったという通知を受け取ったら、あなたは一体どうしますか?
驚き、戸惑い、そして漠然とした不安を感じるかもしれません。
これは決して珍しい話ではありません。
少子高齢化、核家族化が進む現代において、所有者が亡くなり、誰も住むことのない「空き家」が増加の一途をたどっています。
そして、その相続権が遠い親戚や、全く面識のない人へと移っていくケースも少なくないのです。
このブログ記事では、そんな突然の事態に直面したあなたが、冷静に、そして後悔なく最善の選択をするために、知っておくべきこと、考えるべきことを網羅的に解説します。
単なる手続きの説明に留まらず、精神的な負担、経済的な影響、そして何よりもあなたの人生における「空き家」の存在をどう位置づけるかまで、深く掘り下げていきます。
第1章:突然の通知、その内容と意味を理解する
まず、あなたが受け取った通知書の内容をじっくりと確認しましょう。誰からの通知なのか、どのような目的で送られてきたのか、そして最も重要な「なぜ私が相続人なのか」という点です。
1-1. 通知書の差出人を確認する
通知書を送ってきたのは、どのような機関でしょうか?
- 弁護士事務所、司法書士事務所:
- 被相続人の遺産整理を依頼された専門家である可能性が高いです。
- 相続人の調査を行い、あなたを相続人として特定したため、連絡を取っていると考えられます。
- 遺産分割協議を促す、または遺産の内容を知らせる目的が多いです。
- 家庭裁判所:
- 相続放棄の申述照会: 他の相続人が相続放棄を申し立てたため、あなたが次の順位の相続人になった場合に、家庭裁判所から相続放棄の意思を確認する通知が来る場合があります。
- 相続財産管理人の選任申立て: 相続人が存在しない、または相続人全員が相続放棄をした場合に、利害関係人(債権者など)が相続財産管理人選任を申し立てた場合、家庭裁判所から連絡が来ることがあります。
- 市町村役場:
- 固定資産税の督促: 空き家に対する固定資産税が未納の場合、市町村役場から督促状が届くことがあります。これは、登記簿上の所有者が亡くなっているものの、新たな所有者が不明な場合に、相続人と思われる人物に対して送付されることがあります。
- 特定空き家に関する勧告・命令: 管理不全の空き家が「特定空き家」に指定された場合、市町村からその所有者(相続人含む)に対して、適切な管理を求める勧告や命令が届くことがあります。
- 金融機関、債権者:
- 被相続人が借金を抱えていた場合、その金融機関や債権者が相続人に対して返済を求める連絡をしてくることがあります。
誰からの通知かによって、その後の対応が大きく変わってきます。まずは、落ち着いて差出人と連絡先を確認しましょう。
1-2. なぜ私が相続人なのか?相続順位の基本
「全く知らない空き家の相続人だなんて、どういうこと?」と疑問に思うかもしれません。
民法では、相続人の順位が明確に定められています。
- 常に相続人となる配偶者: 被相続人に配偶者がいれば、配偶者は常に相続人となります。
- 第一順位:子(直系卑属): 被相続人に子がいる場合、子が第一順位の相続人となります。子がすでに亡くなっている場合は、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
- 第二順位:直系尊属(父母、祖父母など): 第一順位の相続人がいない場合、被相続人の父母や祖父母が第二順位の相続人となります。
- 第三順位:兄弟姉妹: 第一順位、第二順位の相続人がいずれもいない場合、被相続人の兄弟姉妹が第三順位の相続人となります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります。
あなたが突然相続人として通知を受けたということは、上記の順位で、あなたより上位の相続人がいないか、あるいは上位の相続人が全員相続放棄をした結果、あなたに相続権が回ってきた可能性が高いです。
1-3. 相続財産とは何か?「空き家」以外のものも含まれる可能性
「空き家」の相続人になったと聞いていますが、相続財産は空き家だけとは限りません。相続財産には、プラスの財産(預貯金、有価証券、土地、建物など)だけでなく、マイナスの財産(借金、未払いの税金、滞納家賃など)も含まれます。
特に、空き家の場合、以下のような費用も相続財産に含まれる可能性があります。
- 固定資産税・都市計画税の未納分
- 管理費用(清掃費、修繕費など)の未払分
- 公共料金(電気、ガス、水道など)の未払分
- 住宅ローン残債
これらの負債もあなたが相続することになる可能性があるため、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても必ず確認する必要があります。
第2章:相続における3つの選択肢
突然の通知にパニックになる必要はありません。相続には、あなたが選択できる3つの道があります。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがありますので、内容をよく理解し、ご自身の状況に合わせて慎重に検討しましょう。
2-1. 単純承認:全ての権利と義務を丸ごと引き継ぐ
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も、全て無条件に引き継ぐことです。
- メリット:
- 特別な手続きは不要で、期限もありません。
- 被相続人の財産を全て受け継ぎ、自由に処分できます。
- デメリット:
- 被相続人に借金などマイナスの財産がある場合、その返済義務も負うことになります。相続財産で負債をまかないきれない場合、自己の財産から返済しなければなりません。
- 空き家の場合、管理義務や維持費用、将来発生するかもしれない損害賠償責任なども引き継ぎます。
注意点: 相続人が、相続財産を処分したり、消費したりする行為(空き家のリフォーム、売却、家財の処分など)を行うと、その時点で単純承認をしたとみなされ、後から相続放棄や限定承認ができなくなります。通知を受け取ったら、安易に空き家に手を出さないようにしましょう。
2-2. 相続放棄:一切の権利と義務を放棄する
相続放棄とは、被相続人の財産(プラスもマイナスも)を一切相続しないことです。
- メリット:
- 被相続人の借金や未払い金などの負債から解放されます。
- 空き家の管理義務や固定資産税などの負担も負わずに済みます。
- デメリット:
- プラスの財産(預貯金など)も一切相続できません。
- 一度相続放棄をすると、原則として撤回できません。
- 次順位の相続人へ相続権が移る: 相続放棄をすると、あなたの次の順位の相続人(兄弟姉妹の子、つまり甥姪など)へ相続権が移ります。あなたが相続放棄をした場合、その旨を次順位の相続人に伝えるなど、配慮が必要です。
- 管理責任が残る可能性: 民法940条には、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています。つまり、あなたが相続放棄をしたとしても、次の相続人が相続財産の管理を始めるまでは、一定の管理責任が残る可能性があります。特に、空き家の場合、倒壊の危険がある、近隣に迷惑をかける恐れがあるなどの状況では、注意が必要です。
期限: 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。この3ヶ月という期間は非常に短く、あっという間に過ぎてしまうことがあります。この期間を過ぎると、原則として単純承認したとみなされてしまいます。
2-3. 限定承認:プラスの範囲でマイナスの財産を相続する
限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内で、被相続人のマイナスの財産を弁済し、余りがあればそれを相続するという方法です。
- メリット:
- 被相続人に借金があるかもしれないが、財産もそれなりにあるという場合に有効です。
- 自己の財産から借金を返済する必要がありません。
- デメリット:
- 手続きが非常に複雑で、相続人全員で合意して行わなければなりません。
- 家庭裁判所への申述に加え、財産目録の作成、官報公告など、多くの手間と費用がかかります。
- 専門家(弁護士、司法書士)への依頼がほぼ必須となります。
期限: 限定承認も、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
第3章:3ヶ月の熟慮期間をどう使うか?取るべき行動
相続放棄や限定承認の期限は3ヶ月です。この短い期間で、あなたは冷静に状況を把握し、判断を下さなければなりません。以下に、この期間に取るべき具体的な行動を示します。
3-1. 家族関係と相続人の調査
まずは、被相続人の家族関係を把握し、他に相続人がいないか確認しましょう。
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本などを取得する: 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を辿ることで、法定相続人を特定できます。これは非常に骨の折れる作業ですが、専門家(弁護士、司法書士)に依頼することも可能です。
- 他の相続人との連絡: 他に相続人がいる場合、彼らも同様に通知を受け取っているか、あるいはこれから受け取る可能性があります。今後の対応について、早めに情報共有を行い、協力体制を築くことが望ましいです。特に、空き家に関して単独で行動すると、後々トラブルになる可能性があります。
3-2. 相続財産(特に負債)の調査
次に、被相続人の財産状況、特に負債の有無を徹底的に調査します。
- プラスの財産:
- 預貯金: 金融機関からの郵送物、通帳、カードなどから取引金融機関を特定し、残高証明書の発行を依頼します。
- 不動産: 登記簿謄本を取得し、所有者や抵当権の有無を確認します。固定資産税の納税通知書なども有効な情報源です。
- 有価証券: 証券会社の口座の有無を確認します。
- その他: 自動車、貴金属、骨董品など、価値のあるものがないか確認します。
- マイナスの財産:
- 借金: 金融機関や消費者金融からの督促状、契約書、カードローンなどの明細がないか確認します。信用情報機関(JICC、CIC、KSCなど)に開示請求を行うことで、より詳細な借入状況を確認できます。
- 税金: 固定資産税、所得税、住民税などの未納がないか、市町村役場や税務署に問い合わせます。
- 滞納家賃・管理費: 賃貸物件に住んでいた場合、家賃や管理費の滞納がないか確認します。
- 保証債務: 被相続人が誰かの借金の保証人になっていなかったか確認します。
- クレジットカードの未払金: クレジットカードの利用明細を確認します。
特に、空き家の場合は、その維持・管理費用(固定資産税、修繕費、水道光熱費など)がどれくらいかかっているのか、今後かかるのかも重要な情報です。
3-3. 空き家の現地調査と状況把握
通知を受けた空き家がどのような状態にあるのか、実際に現地を訪れて確認することが重要です。
- 建物の状態:
- 老朽化の度合い、雨漏り、シロアリ被害、壁のひび割れ、基礎の状態などを確認します。
- リフォームや解体が必要な場合は、その費用も概算で把握しておく必要があります。
- 敷地の状態:
- 敷地の広さ、高低差、隣地との境界などを確認します。
- 私道負担や建築基準法上の接道義務を満たしているかなども確認が必要です。
- 周辺環境:
- 交通の便、商業施設、学校、病院など、生活に必要な施設が周辺にあるか確認します。
- 近隣トラブルの有無や、ゴミ屋敷化していないかなども確認します。
- 家財の状況:
- 遺品として価値のあるものがあるか、あるいは処分に費用がかかるようなものが大量にあるかを確認します。
可能であれば、不動産業者や建築業者に相談し、専門家の視点から客観的な評価や見積もりを取ることをお勧めします。
3-4. 専門家への相談
この一連の調査と判断は、非常に専門的な知識を要します。自力で行うには限界がありますし、誤った判断をすると後で取り返しのつかない事態になることもあります。
- 弁護士:
- 相続財産の調査、相続放棄・限定承認の手続き、他の相続人との交渉、遺産分割協議の調整など、相続に関するあらゆる法的問題に対応してくれます。
- 特に、負債の有無が不明確な場合や、他の相続人との関係が複雑な場合は、早期に相談することをお勧めします。
- 司法書士:
- 相続放棄・限定承認の書類作成、不動産の相続登記、遺産分割協議書の作成など、法務局や家庭裁判所への申請手続きを代行してくれます。
- 弁護士よりも費用が抑えられる場合がありますが、紛争解決には対応できません。
- 税理士:
- 相続税の申告、節税対策など、税金に関する相談に対応してくれます。
- 相続財産に高額な不動産や金融資産が含まれる場合、相続税が発生する可能性がありますので、税理士に相談することをお勧めします。
- 不動産会社:
- 空き家の市場価値の査定、売却可能性、賃貸需要などを調査してくれます。
- 売却を検討する場合、信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。
これらの専門家には、初回相談を無料で行っているところも多いので、積極的に活用しましょう。
第4章:空き家を相続した場合の具体的な対応策
もしあなたが空き家を相続することを選択した場合、その後の具体的な対応策について解説します。空き家には様々な活用方法があります。
4-1. 空き家を売却する
最も一般的な選択肢の一つです。
- メリット:
- まとまった現金を得られる。
- 固定資産税や管理費用などの維持コストから解放される。
- 老朽化した空き家を所有するリスク(倒壊、不法投棄など)を回避できる。
- デメリット:
- 市場価値が低い場合、希望通りの価格で売却できない可能性がある。
- 売却までに時間がかかることがある。
- 売却費用(仲介手数料、測量費、解体費など)がかかる。
- 譲渡所得税が発生する可能性がある(特例が適用される場合もあります)。
売却の手順:
- 不動産会社に査定を依頼: 複数の会社に依頼し、比較検討しましょう。
- 媒介契約の締結: 不動産会社と媒介契約を結びます。
- 売却活動: 不動産会社が買主を探します。
- 売買契約の締結: 買主が見つかったら、契約を締結します。
- 引き渡しと決済: 代金を受け取り、所有権移転登記を行います。
特定空き家の特別控除: 被相続人が住んでいた空き家を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(空き家に係る譲渡所得の特別控除)があります。この特例は非常に有利ですので、税理士に相談して適用できるか確認しましょう。
4-2. 空き家を賃貸に出す
修繕やリフォームをして、賃貸物件として活用することも可能です。
- メリット:
- 家賃収入を得られる。
- 地域の活性化に貢献できる。
- 将来的に売却することも可能。
- デメリット:
- 初期費用(リフォーム費など)がかかる。
- 入居者募集や管理の手間がかかる。
- 空室リスクがある。
- 賃貸物件としての収益性が低い場合がある。
賃貸の手順:
- リフォーム・改修: 賃貸物件として魅力的な状態に整備します。
- 不動産会社に相談: 賃貸物件の管理や入居者募集を依頼します。
- 入居者募集: 広告などを通じて入居者を募ります。
- 賃貸借契約の締結: 入居者と契約を結びます。
- 賃貸管理: 家賃の集金、トラブル対応、修繕などを行います。
4-3. 空き家をリフォームして居住する・別荘として利用する
あなたがその空き家に魅力を感じ、居住する、あるいは別荘として利用するという選択肢もあります。
- メリット:
- 新たな住居や拠点として活用できる。
- 思い出の場所として残せる。
- リフォームによって自分好みの空間にできる。
- デメリット:
- 大規模なリフォームには多額の費用がかかる。
- 立地によっては、生活環境が合わない場合がある。
- 別荘として利用する場合、維持管理の手間や費用がかかる。
注意点: リフォームの費用対効果、将来的なライフプランとの整合性を十分に検討する必要があります。
4-4. 空き家を解体して更地にする
建物が老朽化している場合や、土地の有効活用を考える場合に解体して更地にする選択肢もあります。
- メリット:
- 売却がしやすくなる(建物の状態に左右されず、土地として販売できる)。
- 建物の倒壊リスクや管理負担がなくなる。
- 駐車場や資材置き場など、他の用途で一時的に活用できる。
- デメリット:
- 解体費用が多額にかかる。
- 固定資産税が高くなる: 建物がある土地は「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されていますが、解体して更地になるとその特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍になる可能性があります。
解体する際には、解体費用と、解体後の固定資産税の増加分を考慮し、慎重に判断しましょう。
第5章:空き家問題の背景と国の対策
突然の空き家相続という問題は、個人の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき課題となっています。背景にあるのは、少子高齢化と人口減少、そして核家族化の進行です。
5-1. 空き家が増え続ける日本の現状
総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年時点での空き家数は約846万戸に上り、全国の住宅総数に占める空き家率は13.6%と過去最高を記録しました。このペースで増え続けると、2030年には空き家率が20%を超えるという予測もあります。
空き家が増える原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 所有者の死亡: 高齢化により、所有者が亡くなるケースが増加。
- 相続人の不在・管理放棄: 相続人が見つからない、あるいは相続人がいても遠方に住んでいて管理が難しい、費用負担を嫌がるなどの理由で管理が放棄される。
- 老朽化・耐震性の問題: 古い建物は、購入希望者や賃借人が見つかりにくい。
- 売却・活用が困難: 地方の過疎地域では、土地の価値が低く、売却や活用が難しい。
- 税制上の問題: 建物が建っている方が固定資産税が安くなるため、管理不全の空き家であっても解体せずに放置される傾向がある。
5-2. 空き家対策特別措置法とは?
このような空き家問題に対応するため、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家対策特別措置法)が施行されました。この法律は、管理不全な空き家に対する市町村の権限を強化し、適切に管理されていない空き家への対策を進めることを目的としています。
「特定空き家」とは? 空き家対策特別措置法では、以下のいずれかに該当する空き家を「特定空き家」に指定できるとされています。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空き家に指定されるとどうなる?
- 助言・指導: まずは市町村から所有者に対して、適切な管理を行うよう助言や指導が行われます。
- 勧告: 改善が見られない場合、勧告が出されます。この勧告が出されると、前述の住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がります。
- 命令: 勧告に従わない場合、命令が出されます。
- 代執行: 命令にも従わない場合、市町村が強制的に空き家を解体するなど、必要な措置を講じることができ、その費用は所有者に請求されます。
このように、特定空き家に指定されると、経済的な負担が大幅に増えるだけでなく、最終的には行政によって強制的に解体されるリスクもあります。突然空き家の相続人になった場合、この「特定空き家」に指定されないよう、早めに対応することが重要です。
5-3. 各自治体の空き家バンク・補助金制度
国だけでなく、各地方自治体も空き家対策に力を入れています。
- 空き家バンク制度:
- 空き家の所有者と、空き家を利用したい人(移住希望者、子育て世帯など)をマッチングする制度です。
- 自治体が運営することで、信頼性が高く、安心して取引ができるメリットがあります。
- 補助金制度:
- 空き家の解体費用、リフォーム費用、耐震改修費用などに対する補助金制度を設けている自治体があります。
- 移住を伴う場合に、住宅取得費用や家賃補助などを行う自治体もあります。
あなたが相続した空き家がある地域の自治体のウェブサイトを確認するか、窓口に問い合わせて、どのような制度があるのか確認してみましょう。思わぬ支援が受けられるかもしれません。
第6章:空き家相続にまつわる心理的・精神的な側面
「空き家」と聞くと、単なる建物や土地という物質的な側面だけでなく、故人との思い出や、故人が生きていた証のような、精神的な側面も大きく影響してきます。突然の相続通知は、そうした感情と向き合うきっかけにもなります。
6-1. 故人への想いと物件への執着
たとえ面識がなかったとしても、血の繋がった親族の住んでいた家。そこには、その人の人生の痕跡が色濃く残されています。家財道具や写真、手紙など、故人の暮らしぶりを垣間見ることで、知らなかった親族の存在を身近に感じ、複雑な感情を抱くかもしれません。
「もしかしたら、この家には何か故人の大切なものが残されているかもしれない」「故人が住んでいた家を壊してしまうのは忍びない」といった感情が、冷静な判断を妨げることもあります。しかし、感情だけで判断してしまうと、後々大きな負担となる可能性もあります。
6-2. 遠方からの管理、時間と費用の負担
通知を受けた空き家が、あなたの居住地から遠く離れている場合、その管理は非常に困難になります。定期的な見回り、草刈り、清掃、不法投棄への対応など、物理的な管理だけでも多大な時間と労力がかかります。
また、これらの管理費用、固定資産税、火災保険料など、経済的な負担も重くのしかかります。特に、老朽化が進んでいる場合、修繕費用もかさむでしょう。こうした負担が、精神的なストレスにつながることも少なくありません。
6-3. 近隣住民との関係
空き家を放置しておくと、倒壊の危険、不法侵入、不法投棄、害虫の発生、悪臭など、近隣住民に様々な迷惑をかける可能性があります。すると、近隣住民から苦情が寄せられたり、行政から指導が入ったりすることもあります。
あなたが所有者としてこれらの責任を負うことになるため、近隣住民との関係構築や、問題発生時の対応も、精神的な負担となる場合があります。
6-4. 専門家や第三者の意見を聞く重要性
こうした心理的な側面や、物理的な距離、時間、費用といった現実的な問題は、一人で抱え込まずに、積極的に専門家や信頼できる第三者の意見を聞くことが非常に重要です。
- 専門家(弁護士、司法書士、不動産会社など): 客観的な視点から、法的な手続きや経済的な損得についてアドバイスをくれます。感情を抜きにして、冷静な判断材料を提供してくれるでしょう。
- 家族・友人: あなたの気持ちに寄り添い、精神的なサポートをしてくれるでしょう。ただし、最終的な判断はあなた自身が下す必要があります。
故人への想いを大切にしつつも、現実的な状況を直視し、あなたの人生にとって最善の選択をすることが、結果として故人への敬意にもつながると言えるでしょう。
第7章:あなたの未来のために、今できること
突然の空き家相続は、予期せぬ出来事であり、多くの戸惑いと負担を伴うものです。しかし、このブログ記事を読んだあなたは、この問題にどう向き合い、どう行動すべきか、その道筋が見えてきたはずです。
7-1. 情報を集め、冷静に判断する
まず、最も重要なのは、焦らず、冷静に情報を集めることです。
- 通知書の内容を再確認する。
- 被相続人の家族関係と財産状況を徹底的に調査する。
- 空き家の現状を把握する。
- これらの情報に基づいて、単純承認、相続放棄、限定承認のどの選択肢があなたにとって最適なのかを検討する。
この情報収集と判断のプロセスは、3ヶ月の熟慮期間というタイムリミットがあることを常に意識してください。
7-2. 専門家の力を借りることをためらわない
相続問題は、法律、税金、不動産といった多岐にわたる専門知識が必要となります。自力で全てを解決しようとするのは非常に困難であり、時間と労力がかかりすぎます。また、誤った判断をしてしまうリスクも伴います。
弁護士、司法書士、税理士、不動産会社など、それぞれの専門家は、あなたの状況に応じた的確なアドバイスやサポートを提供してくれます。費用がかかることではありますが、それによって得られる安心感や、将来的なリスクの回避を考えれば、十分に価値のある投資です。初回相談を無料で行っている専門家も多いので、まずは気軽に相談してみましょう。
7-3. あなた自身のライフプランと照らし合わせる
空き家の相続は、あなたの今後の人生に大きな影響を与える可能性があります。
- 経済的な負担: 管理費用、修繕費用、固定資産税など、金銭的な負担をどこまで許容できるか。
- 時間的な負担: 管理や売却にかかる時間と労力を確保できるか。
- 精神的な負担: 空き家に関わる問題に、あなたがどれだけ向き合えるか。
- 将来のライフプラン: 将来、あなたがどこに住み、どのような生活を送りたいのか。空き家がそのプランにどう影響するか。
これらの要素を総合的に考慮し、あなたが本当に望む未来のために、空き家をどう位置づけるかを考えることが重要です。
7-4. 放置は最大のリスク
最も避けるべきは、空き家を放置することです。
相続放棄の期間を過ぎてしまうと、原則として単純承認とみなされ、空き家の負債や管理義務を負うことになります。また、管理不全の空き家は「特定空き家」に指定され、固定資産税の増額や行政による代執行など、さらなるリスクを招きます。
「何もしない」という選択が、結果として最も大きな負担となって返ってくる可能性が高いのです。
最後に
突然の空き家相続という、人生においてそう頻繁には訪れないであろう出来事に直面し、あなたは今、大きな岐路に立っています。
このブログ記事が、あなたが冷静に状況を把握し、適切な判断を下すための一助となれば幸いです。
あなたがこの空き家をどのように活用するか、あるいは手放すか。
どのような選択をするにしても、それがあなたの未来にとって最善の道であることを願っています。
もし、まだ疑問や不安な点があれば、迷わず弊社イーライフ株式会社または併設の船橋相続相談センターにご相談ください。
あなたの前向きな一歩を応援しています。